変化する世界情勢

今、世界は大きな変化にあります。それは、アメリカの民主主義の劣化と、中国の強大化による覇権主義であり、力を背景としたルールを無視する専制主義は、国際社会が抑制しないと戦前のドイツや日本と同じように戦乱を広げる危険があります。これまで日本は、中国経済が発展をすれば、アジアの平和と繁栄がもたらされるものと日中友好を基本として中国への経済支援と企業の進出を進めてきました。今から30年前ほどの天安門事件の時も、G7(先進7か国)首脳会議で、中国に対する武器輸出の禁止や世界銀行の融資の停止などの外交制裁を実施しようとしていた時も、中国を国際的に孤立化させるのは得策でないと、共同制裁を拒否し、窮地の中国に手を差し伸べて、中国への相互互恵の名の下での経済支援を続けました。この結果、中国はますます軍事、経済の力を増して、30年で軍事費は30倍、空母、ミサイル、爆撃機を近代化し、宇宙やサイバーなどで米国に並ぶ軍事力を持つようになりました。ITや通信技術。半導体、ワクチンなどを製造するできる国家戦略的な資源や技術も、中国が独占的に保有をするようになってきており、それを外交のツールとして膨張・拡大を続けています。このような中国の専制主義・覇権主義を増長させたのは、日本の経済界であり、対中外交政策でありました。しかし、もはや、一国で中国の拡大支配を止められない事態となっており、自由と民主主義を基軸としている米国との同盟関係を強化しつつ、クワッド(豪州・インド)・ASEAN・EUの自由民主経済国との連携を強化し、中国への懸念や憂慮に対抗していくことが必要となっています。トランプ大統領の米国の前政権は、アメリカファーストによる経済の独善と人気取りを競うデマゴークとポピュリズムによって、民主主義の劣化を招いてしまいました。その結果、国際秩序を弱体化させ、中国を増長させてきましたが、今後さらに、米中の経済や軍事勢力が逆転し、2030年までには、総合力での米中逆転が起こるとの見方が広がっています。このまま、パックス・アメリカがパクス・チャイナにとって代わると、中国共産党と習近平主席は、超法規的で法の支配を受けないまま、自らの意思を周辺国へ強要するようになるでしょう。しかし、自由民主の世界の法秩序では、いかなる人も権力も普遍的な法に服さなければならないのであって、自由民主主義制度の核心は、人間尊重の思想であり、「一人の幸せは、みんなの幸せ。みんなが幸せになるには、一人一人の自由意志や人格を尊重しなければなりません」自由民主主義は、人類の貴重な遺産であり、すべての人の尊厳を守り、自由と人権を守る精神が民主主義の中核の動力となっているのです。近年の中国の人民抑圧の強化や少数民族への圧迫、周辺への軍事力を行使しての一方的な支配拡大を許すなら、アジアや全世界の将来に不幸な歴史を残すことになるでしょう。「基本的人権の尊重」という、人類普遍の天道にしたがうことや人々の生命・自由・信条・風習を尊重し、人々を慈しむということは、人類の変わりなき道理であり、それは、当たり前のことではなく、努力して守っていかなければならないことなのです。最近の中国の振る舞いに対して、日本は懸念や疑念を表明するだけではなく、腰を据えて毅然と物事を言い、やめさせる力を持ち、国際社会と共に、行動していかなければなりません。。戦後、日本外交は「対話と協力」という対話路線を大事にしてきました。しかし、その弱腰で軟弱な外交姿勢では、今の中国の姿勢を変えることはできません。「もはや、言葉では、日本の言うことを聞かないのです。」実行力のある、行動で自由と民主主義を守るためにも、まずは、中国やミャンマーで行われている人権を無視する弾圧行為に対して、国会での批難決議を行い、制裁し抑止することができる「グローバルな人権侵害制裁法」を成立させることです。それによって、人権弾圧の抑止や停止のための日本外交の選択肢の幅も広がり、中国の人権を侵害する行為に対する抑止力と阻止する力になるのです。今年3月に行われたアラスカでの米中会談で、中国の外交トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員は、「中国は発展した。政府の行動は完全に正しかった。米国や西側諸国が国際世論を代表することはない。世界の圧倒的多数の国々は、米国が提唱する普遍的な価値観や米国の意見が国際世論を代表すると認識していない。少数の人々によって形成されたルールが国際秩序の基礎をなすとは思わない。」と人権弾圧行為を認めようとはしませんでした。いくら言っても行動を変えようとしない中国の膨張主義や個人の尊厳を認めない共産主義に対しては、毅然として対応して行かないと、世界の平和と安全を守っていく国際的な規範が失われてしまい、国家としての主権や自由民主の理念をも維持することもできないようになってしまうでしょう。今こそ、日本はアジアのリーダー国として、国際社会と共に、自由と民主主義を守っていくという使命と役割を果たしていく使命があります。