朝鮮半島情勢

朝鮮半島は、南北で戦略ミサイルの性能向上や大型のミサイル発射可能な潜水艦からの発射実験を繰り返している。北朝鮮は、9月15日、平安南道陽徳の山岳地帯から、「鉄道機動ミサイル連隊」の有蓋貨車が短距離弾道ミサイル(SRBM)2発が変則的な軌道で約750キロ飛翔し、日本の排他的経済水域(EEZ)内の能登半島沖約300㌔メートルに落下した。ロシア製の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」であり、装輪型の輸送起立発射(TEL)よりも機動性と隠密性は向上している。2回目は9月28日、極超音速ミサイル「火星8号」を慈江道から東方に発射し、「飛行の操縦性と安全性を確かめた分離された滑空飛行のミサイルの弾道誘導機動性や、滑空飛行性、技術的な指標を確認した。火星8号は、大気圏突入後にマッハ5以上の極超音速で滑空飛翔・機動して目標へ到達する「極超音速滑空兵器亅であり、滑空弾・Hypersonic Glide Vehicleは、レーダーで捕捉しづらい低空を迎撃ミサイルよりも高速でミサイルが侵入してくるため迎撃ができない新兵器であり。ロシアの「アバンガルド」や中国の「DF17」としても公開されており、北朝鮮は、日米を出し抜いてHCMトップ集団に立ったといえる。3回目は、総選挙の告示日10月19日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を、咸鏡南道の新浦沖合から日本海に向けて、潜水艦「8・24英雄艦」から発射した。このSLBMは、5年前に初めてSLBMを発射した潜水艦から新型SLBMが発射されたとして、多くの進化した誘導技術が導入された発表した。北朝鮮が初めてSLBMを発射したのは2016年8月24日の「北極星」であり、地上からコールドチェーン方式という発射後空中でロケットを再噴射して上昇する固体燃料の技術であり、今回まで5回にわたり発射している。防衛省はこの時に発射されたミサイルは2発で、うち1発が最高高度約50㌔メートルを変則軌道で約600㌔メートル飛翔したのち、朝鮮半島東側の日本海に落下したと発表したが、敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するとその対応を検討することを付け加えた。今回発射されたSLBMは、今年1月の夜の朝鮮労働党大会の閲兵式に登場した「北極星5号」であり、北朝鮮は、東海作戦水域で任務を遂行する作戦配備を推進しており、近い将来、北極星5号を搭載した3000㌧級のSSB(戦略ミサイル搭載潜水艦)を実戦配備する計画を持っている。なぜ、北朝鮮は、米朝交渉や韓国の南北対話を進めようとしてる最中に、1カ月の間に新型ミサイル発射を立て続けに行ったのかは、「自衛2021」という新兵器の展示会を行ったのは、周到に準備された国防政策の遂行の一環であり、展示会では大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星17」(射程距離は1万3000㌔メートル)、「火星15」(射程1万㌔メートル以上)、HCM「火星8」極超音速ミサイル、「火星12」中距離弾道ミサイル(射程距離は3700㌔メートル)、SRBMの「KN-23」「KN-25」などを公開することによって、金正日死後10年、金正恩氏が「国家核武力完成」を宣言してから、4周年を迎えた態勢を誇示することに狙いがあります。金正恩氏は、自衛2021の冒頭演説で、韓国を意識して、狙い撃ちしている。「最近になって度を超えるほど露骨になる韓国の軍備近代化の企図を見ても、朝鮮半島地域の軍事的環境が変化する近い将来を容易に推測できる。韓国は米国の強力な後押しの下でステルス合同打撃戦闘機と高高度無人偵察機、膨大な各種先端兵器を搬入し、自軍の戦闘力を更新しようとしている。ミサイルガイドラインを改定し、国防技術力を特に強調し、さまざまな弾頭の開発、射程の向上など下心が見えすいたミサイル能力向上をはじめ、潜水艦の戦力強化、戦闘機の開発など多方面にわたる攻撃用軍事兵器の近代化に専念している。我々は、韓国を標的にして国防力を強化しているのでない。」といいつつ、韓国による軍備強化に強いプレッシャーを受けていることに対する韓国への強いメッセージになっている。韓国の文在寅大統領は北朝鮮へのメッセージも送っており、9月21日、国連総会一般討論演説で「朝鮮戦争終結宣言」に言及、金与正氏は、「終結宣言は興味深い提案であり、良い発想であると考える。終結宣言は悪くない」と肯定的な発言をして、南北通信線を10月4日に再開したのは、南北の軍事バランスが逆転してきた兆候であろう。韓国は、米国から60機をのステルス戦闘機「F-35」を導入、4.5世代戦闘機「KF-21 ポメラ」、SRBM「玄武-1・2」と巡航ミサイル「玄武-3」、SLBM「玄武-4」など、装備を近代化している。また、「米韓ミサイルガイドライン」を改定し、対北抑止力強化への強い意思を見せ、自らの国防技術力を強調して弾頭の開発や射程の向上を行っている。8月13日には、独自開発・建造の新型潜水艦「島山安昌浩」からSLBMを発射、10月21日には、初の国産ロケット「ヌリ」の打ち上げに成功し、ICBM保有能力を持ったことになった。南北の朝鮮半島の軍事力強化や核・ミサイル開発を推し進める理由は、最大の抑止力を得るためである。韓国のミサイル開発が象徴する南北の軍事バランスの変化から、金正恩氏は、冷戦時代に米ソが核軍拡を進めた結果、軍拡の負担に耐えられなくなってソ連が崩壊したことを恐れている。韓国のムンジェイン政権は、2018年10月に「国防改革2.0」を打ち出し、少子化社会への兵力削減、在韓米軍司令官の作戦統制権(OPCON)の韓国側への移管、兵営文化、防衛産業の4大改革を進める中で、「3軸体系戦力」の構築を進めている。3軸体系戦力とは、北朝鮮の核・ミサイル戦力を無力化するための手段として、(1)ミサイル攻撃の兆候を早期に察知して先制攻撃する「キル・チェーン」、(2)ミサイル迎撃システム「韓国型ミサイル防衛(KAMD)」、(3)攻撃に対する報復として金正恩氏など指導部を攻撃する「大量反撃報復(KMPR)」を整備することである。金正恩氏が恐れるステルス戦闘機はキル・チェーンの主役であり、玄武ミサイルはまさに大量反撃報復の手段そのものだといえる。これは、朝鮮半島の軍事バランスに大きな影響を与えているが、なぜ、ムンジェイン政権は、金正恩氏が恐れるほどの軍備強化を推進するのかは、過激な民主化運動を闘い抜いて政権を奪取した彼らに共通する、自主・民主・人権を絶対的な理念としているからである。彼らにとって北朝鮮は、自主・民主・人権の理念が浸透されていない、「解放」してあげなければならない国家であり、「朝鮮半島問題は韓国が主導的に解決しなければならない」という「朝鮮半島運転者論」という「正義」と「道徳優位性」を掲げているからである。これは、日本との関係にも、優位に立とうとしているが、北朝鮮に対しては北の抑止力を無力化する3軸体系戦力を武器にして対峙しているのである。正義を振りかざす文在寅大統領は、北東アジアを平和に導く運転手であるのか、それとも軍拡の旗手であるのか。来年3月までの任期中に、ムンジェイン政権は、政権交代にならないように、全力で、安全保障においても、最後の試みを行おうとしているが、それが、我が国や東アジアの安全保障に、どのように影響し合っているのかを冷静に分析し、対処しておかなければなりません。我が国の兵器の近代化も遅れをとらず、国家目標として急いで進めていかねばなりません。