アフガン情勢

アフガニスタンは、古来から東西文明の接点であり、安全保障の要衝でした。1979年末のソ連軍侵攻以来、混乱状態にあり、ソ連のアフガン撤退、米ソ冷戦崩壊、2001年米国同時多発テロ事件での国連多国籍軍のアフガニスタン侵攻から20年、米軍と政府軍の統治が行われましたが、バイデン政権が、8月末日までに米軍の完全撤退を発表し、各地からの撤収を進めております。しかし、ガニ政権は非常に弱体化しており、状況は急激に悪化し、タリバンが国土の70%以上を制圧、カブールに迫る勢いですが、政府軍はタリバンと戦う能力も意思もない状態で、権力の空白ができ、イスラム教スンニ派系過激派のタリバン軍による首都カブールの陥落、新政府樹立が宣言されることが現実のものとなっています。そうなると、旧政権や米軍協力者への報復や制裁が避けられず、現地邦人・企業への影響、安全確保、大使館員の避難、通訳などの日本政府や米軍に協力した従事者の国外脱出と保護が必要となっており、日本としても、米軍協力の観点で、日本国内の米軍基地内などのエリアに避難・居住させ、安全を確保することができれば、良き対米支援となります。タリバンが期待するのは、パキスタン、ロシア、イラン、中国からのサポートであり、01年9月11日の米同時多発テロから20年の節目に、これが発生した時点のアフガニスタンへの逆戻りしないように国際社会が取り組む必要があります。問題は、20年前と比べて事態は一層悪化し、タリバンと「イスラム国」(IS)が連携したテロ国家の再来になることです。アフガニスタン国内には、5000人以上の武装したIS戦闘員が存在しており、隣国のタジキスタンとトルクメニスタンにも派兵を進め、中央アジア各国の国境警備隊と武力衝突が発生しています。日本は、アフガニスタンのガニ政権とともにタリバンともチャンネルを持っており、アフガン情勢の悪化を懸念しているタジキスタンやウズベキスタンとも日本は友好的関係を維持しています。米国や国連や国際社会と協力して、国際テロリズムを阻止するために日本が独自に行えることが少なからずあり、情報収集を強化するとともにタリバンと交渉できるルートを今のうちに強化しておくこと。そして、タリバンには、日本から、ISによる革命の輸出(国際テロリズム)を阻止するように働きかけることが急務になるでしょう。そのために、日本外交は、国際社会で何ができるのか。国連や近隣関係国への「積極的平和主義」の理念と行動が求められています。